キッズレスリングの練習は、競技人口数や施設の関係もあり、1回の練習において発育発達段階の異なる集団が一同に介してトレーニングを行うことが通例です。
発育発達段階が異なるとは、中学校3年生もいれば、未就学児も存在するということです。
同じ技術をそれぞれに対して説明しながら修得させていくことは、反復練習のような運動学習(Motor Learning)を実施することが望まれます。しかしながら、それぞれの発育段階で言葉の理解度が異なることから、未就学児と中学校3年生の動作は当然異なります。各年代にどのようにアプローチしていくか、非常に頭を悩ませていました。この部分にコーチングの難しさを感じている中、「図子浩二(2016)コーチングモデルと体育系大学で行うべき一般コーチング学」という著名な論文に出会うことができました。
図4(図子,2016)に示すとおり、コーチングスタイルには4ステージあり、そのステージよってコーチのかかわり方が異なります。
図子(2016)によれば、第1ステージは初心者であることから、取り組むべき課題も多く、基本となる技術や基礎的な動きに主眼を置いた指導行動を実施し、「指導型コーチングスタイル」を選択します。第2ステージは第二次成長期に差し掛かる部分でもあり、第1ステージのような指導型に加え、心理的・教育的な視点のアプローチ、つまり育成行動も含めた「指導・育成型コーチングスタイル」を選択します。
第二次成長期の終焉を迎えるころには、指導行動の量を抑えた「育成型コーチングスタイル」を選択します。最終的にはセルフコーチングできるアスリート(第4ステージ・パートナーシップ型)を目指します。
TEAM BISON’S by SENSHU-UNIV.では2枚の写真にあるとおり、手前を幼児・小学校低学年を位置し、奥に向かうほど年齢が上がっていく配置をとっていることから、各年代において上述のコーチングスタイルを選択していくことが重要と考えます。
コーチング行動という視点に立てば、図3(図子,2016)に示すとおり、Double Goalを目指していくことが望まれます。上述した「指導行動」「育成行動」は図3から成る行動基軸です。大切なのは、トレーニングすることで人間力が高まる、ではなく、競技力と人間力は相補的な関係ではなく、それぞれが独立していることから、アプローチもそれぞれ異なるということです。
上記のようなコーチングを「可変型コーチングスタイル」と称し、図子(2016)の文献は上記以外にも様々な指針を示唆してくれました。
図子(2016)によれば、当事者主義とは、「ジャングルのなかをかき分け進む世界に生きる主体」を示しています。当事者、つまりアスリートである子どもたちが時系列的に変化していくことを考えれば、そのアプローチは可変型(的?)であるようなものと考えます。
≪参考文献≫
図子浩二(2016)コーチングモデルと体育系大学で行うべき一般コーチング学の内容,コーチング学研究,29(3):21-33
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